連帯保証人とは?メリットやリスク、民法改正に伴う変化を徹底紹介

連帯保証人_とは_保証人との違い_リスク

連帯保証人になることを引き受けた場合、ある日突然債権者から借金の残額について全額の返済を求められても文句は言えません。

安易な気持ちで連帯保証人を引き受けてはいけません。当記事を参考 連帯保証の持つリスクについて理解を深めておきましょう。

連帯保証人とは?

連帯保証人_とは

連帯保証人とは、主債務者が借りた借金の返済について主債務者とともに返済する責任を負う人のことを指します。

保証人とは、お金を借りた人(主債務者)がお金を返せなくなった場合に、代わりに返済の義務を負う人のことです。
そのうち「連帯保証人」と呼ばれる人は、連帯の言葉の通り、主債務者と一緒に返済の義務を負います。ほぼ主債務者と同じようなポジションに置かれるのが、連帯保証人の特徴です。

たとえば連帯保証人がいる場合、貸金業者(債権者)は主債務者ではなく連帯保証人に全額の返済を要求してもよいことになっています。

連帯保証人が必要となるケース

連帯保証人が必要となる代表的なケースはマンションやアパート、戸建て賃貸など賃貸住宅の賃貸借契約を結ぶ場面です。
住宅ローンでも、ペアローンを組む場合や金融機関から必要とされた場合、連帯保証人が必要となります。
その他、自動車のカーローンでも連帯保証人が求められるケースもあります。

不動産や自動車といった高額な契約を結ぶ場合、あるいは、高額な契約に際して債務者の収入に不安がある場合などに、不動産業者・貸金業者などから連帯保証人の設定を求められるのが通常です。

連帯保証人は債権者側にとって「都合のよい存在」

連帯保証人は、お金を貸す側にとっては都合のよい存在といえます。
主債務者が借金を返済できなくなった場合や夜逃げした場合に、連帯保証人がいればお金を回収できる可能性が高くなるからです。

こうした事情から連帯保証人の制度は実務では非常によく使われます。
保証人という言葉そのものが連帯保証人のことを指して使われることも珍しくありません。

「保証人になってくれ」と知人や友人に頼まれたら、簡単に引き受けてはいけません。
実際には「連帯保証人になってくれ」と言われているのと同じと考えるべきです。

連帯保証人のメリット

検索で「連帯保証人のメリット」を調べてこの記事に辿り着く方が多いようですが、結論から言ってしまうと連帯保証人になるメリットは一切ありません。
前述した通り連帯保証人になると全ての支払の責任を負わされるだけです。

誰かの連帯保証人となることに、メリットや見返りは一切ないと考えておきましょう。
仮に友人に頼まれたとしても、軽率に連帯保証人になることだけは回避するべきです。

連帯保証人と保証人の違い

保証人と連帯保証人の違い

同じ保証人でも、連帯保証人と保証人とでは保証人を引き受けた人が被るデメリットが大きく異なります。

ここでは連帯保証人と保証人の違いについて解説します。

催告の抗弁権の有無

保証人には催告の抗弁権がある

保証人には「催告の抗弁権」があります。

催告の抗弁権とは、債権者に借金の返済を迫られたときに「先に主債務者に請求してください」と主張して、肩代わり返済を拒める権利です(民法452条本文)。

したがって、通常の保証人であれば、「債務者が本当に返せない」とわかってから初めて借金の肩代わり返済をすればよい、ということになります。

連帯保証人には催告の抗弁権がない

一方、連帯保証人には催告の抗弁権がありません。したがって、債権者に請求を受けたら、すぐにでも借金を肩代わり返済しなければならないのです。

検索の抗弁権の有無

保証人には検索の抗弁権がある

保証人には検索の抗弁権もあります。

検索の抗弁権とは、債権者が保証人の財産に強制執行をかけてきた場合に、「まず主債務者の財産を差し押さえてください」と主張できる権利です(民法453条)。

主債務者に財産があり、かつ強制執行が簡単にできることを証明すれば、この抗弁権をもって債権者の主張を突っぱね、強制執行を拒否することができます。

連帯保証人には検索の抗弁権がない

ところが、連帯保証人にはこの「検索の抗弁権」がありません。
したがって、いきなり債権者が連帯保証人の自宅などの財産に強制執行をかけてきても、拒否することができません。

分別の利益の有無

保証人には分別の利益がある

保証人が複数いる場合、保証人には分別の利益もあります(民法456条・427条)。

分別の利益とは、「自分の負担している債務の金額を超える部分については責任を負わなくてよい」という保証人の利益のことをいいます。

保証人が複数いるとき、まず借金の総額を保証人の頭数で割り、1人あたりの負担額を決めます。
そして、各保証人はそれぞれの負担額についてのみ責任を負うことになります。

例えば、借金が90万円で保証人が3人いるのであれば、保証人1人あたりの負担額は30万円です。つまり、もし主債務者が借金を返せなくなったとしても、30万円だけ負担すればよいということになります。

したがって、債権者に「借金を全額払ってくれ」と請求されても、保証人は「自分が負担している30万しか払いません」と主張することが可能です。

連帯保証人には分別の利益もない

ところが、連帯保証人には分別の利益がありません。
先ほどの例で言えば、連帯保証人一人ひとりに90万円を返済する責任があるのです。つまり、債権者に返済を求められたら、90万円全額を支払う必要があります。

2020年4月 連帯保証人制度の民法改正による変更事項

ここまで紹介してきたとおり、連帯保証人には極めて重い責任が科せられます。
そのため、これまで実務の世界では連帯保証人をめぐる悲惨な事件が絶えませんでした。

こうした事態を受け、2020年4月1日から施行される改正民法では、連帯保証人や保証人の保護が大幅に強化されました。

事業用資金の保証をする場合は公正証書による意思表示が必要

事業用資金のために行う借金は金額が大きくなりがちなことから、保証人保護の要請が特に強いといわれています。

そこで、改正民法では一個人(経営者やその配偶者、役員を除く)が事業のための借金を保証する場合には、「保証をする意思がある旨を記載した公正証書を、契約締結日前1ヶ月以内に作成しなければならない」という特別ルールを作ることにしました。

これは、個人が安易に多額の借金の保証人になることを防止するためのルールです。
このルールによれば、公正証書を作ることなく締結した保証契約は無効になります。

根保証における極度額の記載ルール

第三者の賃貸借や売買取引についての連帯保証人になる場合、「債務があること自体は確実であるものの、総額がわからない債務について責任」を負うことがあります。
いわゆる根保証と呼ばれるものです。

典型的な根保証の例としては、例えばアパートを借りるときの連帯保証人になる場合などが挙げられます。

根保証は、実際に保証人のところに請求が来るまで「自分が責任を負っている債務の額」が見えにくいことが特徴です。
ただ、それでは連帯保証人が突然重い借金を背負わされるリスクがあります。

そこで、改正民法では「個人が根保証をするときには、責任を負う債務の上限額(極度額)を書面などの形で明確にしておかなければならない」というルールを設けることにしました。

主債務者の保証人への情報提供義務

保証人の負うリスクは主債務者の財産状況によって大きく左右されます。
そこで、改正民法では主債務者の情報提供義務を定めました。

このルールによれば、保証契約を結ぶ際には主債務者が保証人となる人に対して、財産状況や債務の総額など必要な情報を提供しなければならないことになっています。

もし情報提供義務違反があった場合、保証人は保証契約を取消すことができます。

債権者の保証人への情報提供義務

債権者の保証人に対する情報提供義務も定められました。保証人から請求を受けた場合、債権者には借金の残額や延滞の有無などについて保証人に知らせる義務があります。

また、主債務者が期限の利益を失った場合には、債務者は保証人に対してその旨を通知しなければなりません。

連帯保証人になることへのリスク

誰かの借金を肩代わり返済する責任を負うということは、それだけで大きなリスクになりえます。しかも、連帯保証人は通常の保証人とは違い、催告の抗弁権や検索の抗弁権、分別の利益がありません。

通常の保証人と比べても重い責任を背負うことになりますので、安易に「連帯保証契約書」にサインをするような行動は避けるべきです。

「連帯保証人になってくれ」と頼まれたときには、契約書にサインした場合のリスクをあらかじめ理解しておく必要があります。

主債務者と同様の責任を背負うことになる

先程も軽く紹介しましたが、連帯保証人になると借金を全額肩代わり返済する責任が発生します。しかも連帯保証人は「主債務者に先に請求してくれ」と債権者に主張することができないので、債権者としては主債務者を差し置いて、いきなり連帯保証人に借金の返済を求めることも可能です。

つまり、連帯保証人になるということは主債務者と同様の責任を負うことでもあるのです。

主債務者が自己破産すると一括請求されてしまう

主債務者には「定められた返済期限までには借金を返さなくていい」という期限の利益があるため、当事者間の合意によっては借金を分割で返済することも認められています。

ところが、こうした分割払いは保証人には認めてもらえないのが通常です。

主債務者が自己破産をすると、借金を返す義務は保証人に移ります。このとき、債権者は借金の残額を一括して請求してくることになります。

万が一払えない金額の請求が来てしまった場合は、保証人も自己破産しなければならなくなるかもしれません。

主債務者に請求しても泣き寝入りになる可能性が高い

肩代わり返済をした場合、連帯保証人は主債務者に「肩代わり弁済をした分のお金を返せ」と請求することができます。しかし、そもそもお金に困っている主債務者が多いことを考えると、お金を返してもらうのは難しいといえるでしょう。

それどころか、主債務者が夜逃げするなどして音信不通になってしまう可能性も十分に考えられます。

連帯保証人になるということは、「主債務者にお金の返済を求めることもできず、いきなり多額の借金を背負って泣き寝入りする」というリスクを背負うことでもあるのです。

連帯保証人は誰に頼めるもの?

では、それほどにリスクの高い連帯保証人を誰かに頼まざるを得ないとなった場合、誰に頼めるものなのでしょうか?

一般的に連帯保証人として認められる人の条件を確認していきます。

安定した職業につき、安定した収入がある人

連帯保証人は、主債務者に代わって債務を支払える人である必要があります。
そのため、債権者は連帯保証人となる人の、まず資力を見ます。定職につき、安定した収入がある人であることは最低限重要です。

アルバイトやフリーターなど、収入が不安定な働き方の人は連帯保証人として認められない可能性があります。

国内在住の人

主債務者が万一連絡がつかなくなったり、トラブルが発生した場合、債権者は連帯保証人に連絡や請求を行います。
そのため、連帯保証人は国内在住の人であることが前提となります。
連絡が取りづらく行方を確認しづらい海外在住の人が連帯保証人になるのは難しいでしょう。

現実的には家族や親族に頼むのが一般的

法的に主債務者と同等の責任を負うことになる連帯保証人は、現実的には主債務者と血のつながった家族・親族などに頼むことになるのが通常です。
ただし、親を連帯保証人とする場合、親が高齢だと収入の安定性の部分で信用されず、連帯保証人として認めてもらえないケースがあります。
あるいは、十分な資力・財産を持つ主債務者の後見人などが連帯保証人となるケースも考えられます。

法的に家族・親族以外の人が連帯保証人になってはいけないルールはないので、主債務者の友人・知人でも連帯保証人になること自体は可能です。
その場合、契約時に主債務者との関係性や相手の資力など慎重な確認が行われたり、場合によっては拒否される可能性もあります。

まとめ

連帯保証人は安易な気持ちでなってはいけない

連帯保証人になることは、借金を背負った本人とほぼ同じ立場になるということと同じです。
そのため、安易に連帯保証契約にサインしてしまうと、後日深刻な借金トラブルに見舞われるおそれもあります。
もし友人や知人、親戚に「連帯保証人になってくれ」と頼まれたとしても、軽い気持ちで引き受けないようにしましょう。

また、すでに連帯保証人となっており、「債権者から多額の請求が来た」という場合でも、今後の生活を守るためにできる手段はあります。

連帯保証人に関するトラブルについて何か不安なことや気になることがありましたら、一度弁護士に無料相談をしてください。

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