自己破産すると年金は受け取れない?年金受給者が自己破産する場合の注意点

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佐々木 光嗣弁護士

年金手帳

年金の種類によって取扱いが異なる

自己破産をすると、債務者の財産のうち債権者への配当のベースとなるべき財産は処分されます。正確にいうと破産管財人の手によって現金化され債権者へと配当されます。年金も本人の「財産」なので、破産したら没収されて債権者へ配当されてしまうのでしょうか?

実は年金の場合「種類」によって自己破産時の取扱いが異なるので、以下で年金の種類ごとにみていきましょう。

公的年金

公的年金とは以下のような年金です。

国民年金、国民年金基金

自営業者や無職の方などが加入している年金です。

厚生年金、厚生年金基金

会社や事業所に勤務している方が加入している年金です。

遺族年金

配偶者と死別した方が受給する年金です。

障害年金

一定の身体障害や精神障害のある方が受給できる年金です。

これらの公的年金は受給者の生活に必須のものと考えられており、法律上「差押禁止財産」とされています。
差押禁止財産とは、借金などを滞納しても差し押さえてはならない財産です。破産法でも差押禁止財産は換価対象にならないルールになっています。
よって自己破産をしても公的年金は没収されず、これまで通り受給し続けられますし、減額される心配もありません。

企業年金

企業年金は、退職金代わりに積み立てる年金です。会社に勤務している方は、勤務先で企業年金制度が採用されていると企業年金の積み立てを行い、将来年金形式で退職金を受け取れます。企業年金には主に以下の2種類があります。

確定給付型企業年金

将来受け取る年金額が確定しているタイプの年金です。予定していた受給金額に不足が生じた場合には企業が補填しなければなりません。

確定拠出型企業年金

受給者が拠出する金額が確定しているタイプの年金です。いくらを受け取れるかは確定しておらず、運用がうまくいけば高額な年金を受け取れますが失敗すると少なくなる可能性があります。
企業年金についても、法律上、差押禁止債権とされています(確定給付企業年金法34条1項確定拠出年金法32条1項)。自己破産をしてもこれらの企業年金を受け取れなくなる心配は不要です。

個人年金

個人年金とは、個人が自己判断で生命保険会社と契約し積立を行う年金です。予定した年数分の積立を完了すると、予定した年齢に達したときに年金を受給できます。個人事業者などの方が「国民年金だけでは不安」と感じて加入しているケースが多数です。

個人年金は差押の対象

実は個人年金は差押の対象になる財産で、自己破産をすると換価されてしまいます。
個人年金はあくまで保険会社との契約によって形成される「個人の財産」であり、生活に必要な最低限の資産とは考えられていないからです。自己破産をすると生命保険金と同じように強制解約されてしまうことがあるので、その場合は受給ができなくなります。

換価対象になる金額について

ただし個人年金の場合でも、必ずしも全額が没収されるとは限りません。自己破産の際には「債務者に生活に必要な最低限の資産を残せる」ためです。各地の裁判所の運用によって違いがありますが、「個別の財産については20万円まで残せる」とされているケースが多数です。

個人年金については生命保険と同じカテゴリになるので、生命保険と個人年金の解約返戻金合計額が20万円以下であれば、強制解約されずそのまま加入し続けられる可能性が高いといえるでしょう。

公務員共済

公務員の方は通常「公務員共済」に加入しており、一定年齢になると共済組合から年金を受け取れます。公務員共済の年金も差押禁止財産なので、自己破産をしても換価される心配はありません。

自己破産で没収されるのは「個人年金」のみ

以上より、数ある年金のうちでも自己破産によって処分される可能性があるのは「個人年金」のみといえます。公的年金と個人年金の両方がある場合、自己破産しても公的年金は受け取れますが個人年金は没収され、受け取れなくなることがあります。

これから年金を受け取る人が自己破産したら

以下ではこれから年金を受け取る方と現在年金を受け取っている方に分けて、自己破産による影響をみていきましょう。

これから年金を受け取る方の場合の影響は、次のとおりです。

差押対象にならない年金

公的年金や企業年金などの「差押対象にならない年金」は、自己破産をしても何の影響も受けません。
破産手続き進行中も手続き終了後も、従来通りに積立を継続していくだけです。

差押対象になる年金

個人年金のように差押対象になる年金は、自己破産をすると強制解約されることがあります。
現在の「解約返戻金相当額」が債権者へ支払われ、今まで積み立ててきた分はすべて失われますし、将来年金を受給できるはずだった年齢に達しても個人年金は支払われません。

将来の生活が不安であれば、破産後に再度個人年金に入り直して積立をやり直す必要があります。

現在年金を受け取っている人が自己破産したら

現在年金を受け取っている方が自己破産すると、以下のように取り扱われます。

差押対象にならない年金

公的年金、企業年金や公務員共済などの「差押対象にならない年金」は、今まで通り受給を続けられます。減額もされません。

差押対象になる年金

差押対象になる個人年金の場合には、自己破産によって強制解約の対象となったときは受給がストップします。これまで個人年金に頼って生活していた方の場合、収入が減って生活が苦しくなってしまうおそれがあります。

加入している年金の種類がわからない場合の対処方法

年金に関するお知らせの通知を確認する

もしも自分の加入している年金の種類がわからない場合、契約相手や「お知らせ」などの通知元によって判断できます。基本的に契約相手が「民間の生命保険会社」なら個人年金、「勤務先」を通じて年金保険料を払っている場合には企業年金または厚生年金、「国」に払っている場合には国民年金です。

年金証書を確認する

また「証書」も確認してみましょう。個人年金の場合には生命保険会社から「個人年金の証書」が渡されているものですし、毎年一回「保険契約の現状」を説明する案内書が送られてきているはずです。企業年金の場合「退職金の分割払い」と理解している方も多数いらっしゃいます。

企業、年金事務所、生命保険会社などに電話する

どうしてもわからなければ、企業や年金事務所、生命保険会社に電話などして「自分が今加入している年金はどの種類のものなのか」聞いてみるか、資料を用意した上で弁護士等の専門家に相談してください。

年金が振り込まれた口座は換価対象になる

公的年金や企業年金を受給している場合や掛け金を支払っている場合、自己破産をしても基本的に影響を受けません。

ただ年金が振り込まれた「預金口座」は自己破産による換価の対象になるので注意が必要です。
預金については一定以上の金額になると、その金額を超える部分が換価対象とされるのが通常だからです。換価対象になるかどうかの基準は多くの地域で「20万円を超える場合」とされています。

仮にその基準が適用される場合、年金が振り込まれる口座の残高が20万円以上になっているタイミングで自己破産をすると、20万円を超える部分の預金(年金が振り込まれたお金)が失われることがあります。

ただし、自由財産制度を活用することによって、生活に必要な財産として預金を認めてもらうこともできます。入金された年金をどのように管理するのがベストなのかについては、弁護士に相談した上でその指示に従うのがよいでしょう。
現金なら99万円まで持ったまま破産できるのが通常です。

破産者の財産に関する具体的な運用方法は各地の裁判所によっても異なるので、詳しくは現地の弁護士に相談してみてください。

税金を滞納すると年金が差し押さえられる可能性がある

自己破産をしても年金は差押対象になりませんが、税金を滞納すると年金が差し押さえられる可能性があります。

公的年金は本人の生活に必要な資産と考えられていますが、税金の徴収には法律によって強い効力が認められているからです。
住民税や所得税、固定資産税や相続税などを滞納すると、国民年金や厚生年金であっても差し押さえられてしまうおそれがあります。

また税金は自己破産をしても免除されません。
できるだけ滞納をせずにきちんと支払うようにして、万一滞納してしまった場合には所轄庁や自治体と話し合って分割払いさせてもらうなど、差押を回避するための対応をしましょう。

年金と自己破産について3つの注意点

年金と自己破産については、以下の3点に注意が必要です。

年金保険料は自己破産をしても免除されない

1つは年金保険料を滞納している場合の問題です。厚生年金なら給料から天引きされるので未納になるケースはほとんどありませんが、国民年金の場合には自分で支払をしなければならないので、滞納してしまう方も比較的多くおられます。

実は年金保険料は自己破産をしても免責(免除)されず、破産後も年金事務所へ支払う必要があります。放置していると年金事務所から督促を受け、最終的には預金を始めとした資産を差し押さえられる可能性があります。また一定年数分の年金を納めないと将来年金を受給できる年齢になってもお金を受け取れません。

年金保険料は、税金と同様に最優先すべき負債です。滞納している方は一刻も早く支払をしましょう。

年金担保貸付があると自己破産で解決できない

年金生活者の方が生活に困ると「年金担保貸付」を利用してしまうケースが少なくありません。年金担保貸付とは、国民年金や厚生年金を担保として公的機関からお金を借り入れられる制度です。「独立行政法人福祉医療機構」が運営しています。

一般の事業者や個人が年金を担保に貸付をするのは違法で許されませんが、独立行政法人福祉医療機構(WAM)だけは年金を担保に貸付をして良いことになっているのです。低金利で条件が良いので、適正な範囲で利用するのであれば特に問題はありません。

年金担保貸付を利用すると年金から天引きされる

しかし年金担保貸付を利用すると、WAMへの返済金は年金から天引きされます。年金額が生活にぎりぎりの方の場合、差引を受けると日々の生活が成り立たなくなってしまうケースがあります。

年金担保貸付は自己破産しても解決できない

年金担保貸付を利用している場合、自己破産をしても解決できません。もともとの貸付金債権が自己破産の対象債権だったとしても「担保権」の効力は否定されないからです。
自己破産をしても年金が担保である事実に変わりなく、年金からの天引きが続くので意味がありません。

自己破産をするとほとんどの借金問題を解決できますが、年金担保貸付を利用している場合だけは解決できない可能性があります。
困ったときには債務整理に詳しい弁護士に相談して、有効な対処方法を検討しましょう。

年金担保貸付を利用すると生活保護も受けられない可能性がある

年金担保貸付を利用してどうしても生活ができなくなったら「生活保護を受けたい」と考えるかもしれません。しかし国は年金担保貸付を利用している方に対し、生活保護の受給を認めないケースがあるので注意しましょう。

生活保護費は、国民の大切な税金が原資となっている貴重なお金であり、生活に困窮する人の生活費に使われるべきです。借金返済に充てるのは不当と考えられているので、基本的に「借金」の返済に生活保護費を充てることが禁止されています。
厚生労働省は年金担保貸付と生活保護の関係について、以下のような方針を明らかにしています。

  • 生活保護受給中の方は年金担保貸付を利用できない
  • 生活保護を受給しながら年金担保貸付を受けたことのある人は、再度貸付を利用して生活に困窮しても生活保護を受けられない

本来、生活保護を受けていると年金担保貸付を受給できません。しかしこっそり年金担保貸付を利用してしまう方もおられます。その場合、再度年金担保貸付を利用して生活が苦しくなったとしても生活保護すら受けられなくなってしまいます。

軽い気持ちで年金担保貸付を利用すると、年金が減らされて自己破産でも解決できなくなるばかりか生活保護すら受給できなくなってしまうので、そのようなことのないよう充分注意してください。

なお、年金担保貸付には生活の困窮を招くという問題点があるという指摘もされていたため、令和4年3月をもって制度が終了することが予定されています。
年金担保貸付制度終了のご案内 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

生活保護と自己破産

高齢の方は、年金が少なくて生活保護を受けておられるケースもあります。自己破産をすると生活保護費を受け取れなくなる可能性はないのでしょうか?

生活保護費には影響がない

生活保護受給者に支給される保護費は、本人の「財産」ではありません。行政機関から最低限の生活保障のために支払われる給付金です。よって生活保護費が自己破産によって没収されたり止められたりする心配はありません。生活保護を受給しているけれど借金があって困っているなら、自己破産を躊躇する必要はありません。

生活保護受給中に借金すると保護を止められる可能性がある

生活保護を受けている場合、「借金」が禁止されるので注意が必要です。生活保護の受給中は役所から「借金をしないように」と指導されますし、こっそり借金をしたら役所から早めに借金問題を解決するように言われます。解決できなければ保護費の給付を止められる可能性もあります。

生活保護受給中に借金してしまったら、早めに自己破産をしましょう。
自己破産によって借金が0になれば返済の必要がなくなるので、「保護費を借金返済に流用している」状態が解消されて問題が解決されます。

自己破産してもなくならに年金以外の財産

年金以外にも「自己破産をしても没収されない財産」があります。

  • 99万円までの現金
  • 20万円程度までの個別の資産
  • 破産手続き開始決定後に得た財産
  • 自由財産として拡張された財産

99万円までの現金

自己破産をしても99万円までは現金を持っていられます。この99万円という金額が、基本的な自由財産の上限の目安の金額とされています。

20万円程度までの個別の資産

預貯金や保険、個人年金などの個別資産も一部持ったまま破産できます。基準額は20万円を上限とされるケースが多数です。

破産手続開始決定後に得た財産

破産手続開始決定後に得られた財産は、破産手続による処分の対象となりません。ただし、破産手続開始決定前から将来得られるであろうことが確定していた財産については処分の対象となることがあるので、注意が必要です。

自由財産として拡張された財産

上記に当てはまらない財産でも生活にどうしても必要な事情などがあって「自由財産」として拡張された場合には所有が認められます。例えば、処分価値が20万円以下であると考えられるような自動車などです。

破産しても手元に残せる財産(差押禁止財産)

以下は差押禁止財産です。差押禁止財産も破産時の換価の対象にならないので手元に残せます。

  • 衣服、寝具、家具、台所用品、建具などの生活必需品
  • 最低限の食料や燃料
  • 農業従事者の農業用具、肥料、種子、牧畜業者の家畜や家畜の飼料など
  • 漁業従事者の漁網や漁具、えさ、稚魚
  • 技術者や職人の道具や器具
  • 実印などの印鑑
  • 仏像や位牌などの祭祀財産
  • 系譜や日記、商業帳簿など
  • 勲章やその他の名誉を表章するもの
  • 学校や教育施設で要な書類や学習道具
  • 発明品、著作物(まだ世間に公表していないもの)
  • 義手や義足などの器具や装具
  • 法令上設置が必要な消防用の機械、器具、避難器具など

自己破産しても年金は受け取れる

年金生活での借金問題の悩みは弁護士に相談を

年金を受給している方が自己破産をすると「年金を受け取れなくなるのではないか」と心配になるものですが、多くのケースで年金を止められる心配はありません。ただし「個人年金」だけは解約となって受給を止められてしまうケースもあるので注意しましょう。

年金生活が苦しくなり「年金担保貸付」を利用してしまったら、年金担保による貸付金の返済義務はなくならないことに加え、生活保護も受けられなくなるおそれがあります。
困ったときには自己判断で借金を重ねるのはなく、債務整理に詳しい弁護士に相談して解決してもらいましょう。

この記事の監修弁護士
弁護士法人札幌パシフィック法律事務所

札幌市中央区にある「札幌パシフィック法律事務所」の弁護士、佐々木光嗣です。私はこれまで、前職までの事務所を含めて5,000件以上の債務整理に関する相談実績があります。債務整理に特化した大手事務所での経験もあり、豊富なノウハウを生かして借金問題に悩む方に最適な債務整理の方法をアドバイスしていきます。

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